公式の証明・導出

はさみうちの原理の証明と応用

関連単元: 数学III 極限

証明する内容

3つの関数 $f(x)$, $g(x)$, $h(x)$ について、$x$ が $a$ に近い(ただし $x=a$ そのものは除いてもよい)範囲で常に

$ g(x) \leq f(x) \leq h(x) $

が成り立っているとします。さらに、

$ \lim_{x\to a} g(x) = \lim_{x\to a} h(x) = L $

が成り立っているとします。このとき、真ん中の関数 $f(x)$ についても、

$ \lim_{x\to a} f(x) = L $

が成り立ちます。これを、はさみうちの原理と呼びます。$f(x)$ が、両側から同じ値 $L$ に近づいていく2つの関数 $g(x)$ と $h(x)$ の間に「はさみうち」にされているため、$f(x)$ 自身も $L$ に近づかざるを得ない、という主張です。

証明

直感的な説明

まず、直感的なイメージをつかんでおきます。$x$ を $a$ に近づけていくと、$g(x)$ はどんどん $L$ に近づいていき、$h(x)$ もどんどん $L$ に近づいていきます。ところが、$f(x)$ は常に $g(x)$ 以上・$h(x)$ 以下の値をとらなければなりません。$g(x)$ と $h(x)$ がどちらも同じ値 $L$ に押し縮められていくのですから、その間に挟まれている $f(x)$ も、逃げ場を失って $L$ に押し縮められていくしかありません。これが、はさみうちの原理が成り立つ理由の直感的なイメージです。

極限の定義に基づく説明

これをもう少し正確に説明します。「$x\to a$ のとき $g(x)\to L$」ということは、$x$ を $a$ に十分近づければ、$g(x)$ の値をいくらでも $L$ に近づけられる、という意味です。つまり、どんなに小さい正の数 $\varepsilon$(イプシロン)を指定されても、$x$ を $a$ に十分近くとりさえすれば、

$ L-\varepsilon < g(x) < L+\varepsilon $

を満たすようにできる、ということです。同じように、「$x\to a$ のとき $h(x)\to L$」ということから、$x$ を $a$ に十分近くとれば、

$ L-\varepsilon < h(x) < L+\varepsilon $

も満たすようにできます。

いま、$x$ を $a$ に十分近くとって、上の2つの不等式が両方とも成り立つようにします(それぞれを満たす近さがあるので、その両方より厳しい方の近さを採用すれば、両方同時に満たせます)。このとき、仮定である $g(x)\leq f(x)\leq h(x)$ とあわせると、次のように不等式をつなげることができます。

$ L-\varepsilon < g(x) \leq f(x) \leq h(x) < L+\varepsilon $

この不等式の一番左と一番右だけを取り出すと、

$ L-\varepsilon < f(x) < L+\varepsilon $

が得られます。これはつまり、$f(x)$ の値と $L$ との差が $\varepsilon$ より小さい、ということを意味しています。

そして、この $\varepsilon$ は、最初にどんなに小さい正の数として指定されたとしても、$x$ を $a$ に十分近づけることで実現できることを確認しました。「どんなに小さい正の数 $\varepsilon$ に対しても、$x$ を $a$ に十分近づければ $f(x)$ と $L$ の差を $\varepsilon$ より小さくできる」というのは、まさに「$x\to a$ のとき $f(x)\to L$」ということの意味そのものです。したがって、

$ \lim_{x\to a} f(x) = L $

が示されました。

応用: $\displaystyle\lim_{x\to 0}\frac{\sin x}{x}=1$ の証明

はさみうちの原理を使った代表的な応用として、$\dfrac{\sin x}{x}$ の $x\to 0$ での極限を求めてみます。

ステップ1: $0

原点 $O$ を中心とする半径 $1$ の円を考え、円周上に点 $A=(1,0)$ をとります。角度 $x$ を $0

このとき、次の3つの図形を考えます。

  • 三角形 $OAP$(頂点 $O,A,P$ でできる三角形)
  • 扇形 $OAP$(中心角 $x$、半径 $1$ の扇形)
  • 三角形 $OAT$(頂点 $O,A,T$ でできる三角形)

角度 $x$ が $0

それぞれの面積を計算します。

三角形 $OAP$ の面積は、$OA=1$, $OP=1$ で、その間の角が $x$ なので、

$ \text{三角形}OAP\text{の面積} = \frac{1}{2}\cdot OA\cdot OP\cdot \sin x = \frac{1}{2}\sin x $

扇形 $OAP$ の面積は、半径 $1$、中心角 $x$(ラジアン)の扇形の面積の公式 $\dfrac{1}{2}r^2\theta$ より、

$ \text{扇形}OAP\text{の面積} = \frac{1}{2}\cdot 1^2\cdot x = \frac{1}{2}x $

三角形 $OAT$ の面積は、底辺を $OA=1$、高さを $AT=\tan x$ とする直角三角形なので、

$ \text{三角形}OAT\text{の面積} = \frac{1}{2}\cdot OA\cdot AT = \frac{1}{2}\tan x $

以上の面積の大小関係から、

$ \frac{1}{2}\sin x < \frac{1}{2}x < \frac{1}{2}\tan x $

両辺を $2$ 倍して、

$ \sin x < x < \tan x $

が得られます。

ステップ2: 不等式を変形する

$00$ なので、上の不等式全体を $\sin x$ で割ることができます(正の数で割るので不等号の向きは変わりません)。

$ 1 < \frac{x}{\sin x} < \frac{\tan x}{\sin x} $

右辺は、$\tan x = \dfrac{\sin x}{\cos x}$ であることを使うと、

$ \frac{\tan x}{\sin x} = \frac{\sin x}{\cos x}\cdot\frac{1}{\sin x} = \frac{1}{\cos x} $

となるので、

$ 1 < \frac{x}{\sin x} < \frac{1}{\cos x} $

が得られます。この各辺の逆数をとります。すべての辺が正の数なので、逆数をとると不等号の向きが反転します。

$ 1 > \frac{\sin x}{x} > \cos x $

つまり、

$ \cos x < \frac{\sin x}{x} < 1 $

が、$0

ステップ3: はさみうちの原理を適用する($x\to 0^+$ のとき)

ステップ2で得た不等式 $\cos x < \dfrac{\sin x}{x} < 1$ において、$x\to 0^+$(右側から $0$ に近づける)とすると、左側の $\cos x$ は $\cos 0=1$ に近づき、右側の定数 $1$ はそのまま $1$ です。したがって、はさみうちの原理により、

$ \lim_{x\to 0^+} \frac{\sin x}{x} = 1 $

が示されます。

ステップ4: $x\to 0^-$ の場合を確認する

$x<0$ の場合も考えます。$x=-t$ とおくと、$x\to 0^-$ のとき $t\to 0^+$ です。このとき、

$ \frac{\sin x}{x} = \frac{\sin(-t)}{-t} $

正弦は奇関数(符号を反転させると値の符号も反転する関数)なので $\sin(-t)=-\sin t$ です。したがって、

$ \frac{\sin(-t)}{-t} = \frac{-\sin t}{-t} = \frac{\sin t}{t} $

となり、$t\to 0^+$ のときステップ3の結果より $\dfrac{\sin t}{t}\to 1$ です。したがって、

$ \lim_{x\to 0^-}\frac{\sin x}{x} = \lim_{t\to 0^+}\frac{\sin t}{t} = 1 $

も成り立ちます。

ステップ5: 結論

$x\to 0^+$ のときも $x\to 0^-$ のときも極限が同じ値 $1$ になったので、両側からの極限が一致し、

$ \lim_{x\to 0}\frac{\sin x}{x} = 1 $

が証明されました。

この証明のポイント

はさみうちの原理そのものは、「両側から同じ値に近づく2つの関数の間に挟まれた関数は、その値に近づくしかない」という不等式の性質を使った証明方法です。この原理を実際に使うときのコツは、証明したい式を直接計算するのではなく、それを上下から評価できる、もっと扱いやすい2つの式(この場合は $\cos x$ と $1$)を見つけることです。$\sin x/x$ の極限の証明では、円の面積(扇形)と三角形の面積を比較するという図形的な工夫によって、その「扱いやすい上下からの評価」を作り出しています。