公式の証明・導出

合成関数の微分(連鎖律)の証明

関連単元: 数学III 微分法

証明する内容

2つの関数 $y=f(u)$ と $u=g(x)$ があり、どちらも微分可能であるとします。このとき、$x$ の関数として合成した $y=f(g(x))$ も微分可能であり、その導関数は

$ \{f(g(x))\}' = f'(g(x))\cdot g'(x) $

となります。これを合成関数の微分公式、または連鎖律と呼びます。「外側の関数 $f$ を、中身の $g(x)$ を1つのかたまりとみなして微分したもの」と、「内側の関数 $g$ をそのまま $x$ で微分したもの」を、かけ合わせればよい、という公式です。

証明

考え方の準備: 微小変化の比として捉える

$u=g(x)$、$y=f(u)=f(g(x))$ とします。$x$ を $x+\Delta x$ に少しだけ変化させたとき、それにともなって $u$ が $u+\Delta u$ に、$y$ が $y+\Delta y$ に変化するとします。ここで、$\Delta x$, $\Delta u$, $\Delta y$ は、それぞれ $x$, $u$, $y$ のわずかな変化量を表します。

導関数 $\dfrac{dy}{dx}$ とは、この変化量の比 $\dfrac{\Delta y}{\Delta x}$ の、$\Delta x\to 0$ のときの極限のことでした。

$ \frac{dy}{dx} = \lim_{\Delta x\to 0}\frac{\Delta y}{\Delta x} $

ここで、もし $\Delta u\neq 0$ であれば、分数 $\dfrac{\Delta y}{\Delta x}$ に、$\dfrac{\Delta u}{\Delta u}$(値は $1$)をかけても値は変わらないことを利用して、次のように書き換えることができます。

$ \frac{\Delta y}{\Delta x} = \frac{\Delta y}{\Delta u}\cdot\frac{\Delta u}{\Delta x} $

これは、単に分数のかけ算として、$\Delta u$ を約分すればもとの $\dfrac{\Delta y}{\Delta x}$ に戻ることから確かめられます。

ステップ1: 極限をとる

上の式の両辺で、$\Delta x\to 0$ の極限を考えます。

$ \lim_{\Delta x\to 0}\frac{\Delta y}{\Delta x} = \lim_{\Delta x\to 0}\left(\frac{\Delta y}{\Delta u}\cdot\frac{\Delta u}{\Delta x}\right) $

まず、$\Delta x\to 0$ のときに $\Delta u$ がどうなるかを考えます。$u=g(x)$ は微分可能、したがって連続な関数なので、$x$ の変化量 $\Delta x$ が $0$ に近づけば、$u$ の変化量 $\Delta u=g(x+\Delta x)-g(x)$ も $0$ に近づきます。つまり、$\Delta x\to 0$ ならば $\Delta u\to 0$ です。

このことから、右辺の極限を、$\Delta u\to 0$ の極限と $\Delta x\to 0$ の極限に分けて考えることができます。

$ \lim_{\Delta x\to 0}\frac{\Delta y}{\Delta u} = \lim_{\Delta u\to 0}\frac{\Delta y}{\Delta u} = \frac{dy}{du} = f'(u) = f'(g(x)) $

これは、$y=f(u)$ の $u$ に関する導関数の定義そのものです。また、

$ \lim_{\Delta x\to 0}\frac{\Delta u}{\Delta x} = \frac{du}{dx} = g'(x) $

これは、$u=g(x)$ の $x$ に関する導関数の定義そのものです。

ステップ2: 結論をまとめる

積の極限は、それぞれの極限の積として計算できる(極限の性質)ので、

$ \frac{dy}{dx} = \lim_{\Delta x\to 0}\frac{\Delta y}{\Delta u}\cdot\lim_{\Delta x\to 0}\frac{\Delta u}{\Delta x} = f'(g(x))\cdot g'(x) $

したがって、

$ \{f(g(x))\}' = f'(g(x))\cdot g'(x) $

が示されました。

この説明で注意すべき点

ここまでの説明では、$\dfrac{\Delta y}{\Delta x}=\dfrac{\Delta y}{\Delta u}\cdot\dfrac{\Delta u}{\Delta x}$ という変形を行う際に、分母である $\Delta u$ が $0$ でないことを暗黙のうちに使っています。実際には、$\Delta x$ を $0$ に近づけていく途中で、$\Delta u=g(x+\Delta x)-g(x)$ がちょうど $0$ になってしまう($x$ の近くで $g$ の値が一時的に変化しない)ケースもありえます。そのようなケースでは、この説明の変形がそのままでは使えず、より厳密な議論が必要になります。

しかし、そのようなケースは特殊な例外的状況であり、高校で扱うほとんどの関数(多項式、三角関数、指数関数、対数関数などの組み合わせ)では問題なく成り立ちます。高校段階では、上で説明した「変化の比を分解する」という考え方で、公式の成り立つ仕組みを直感的に理解しておけば十分です。より精密な扱いは、大学で学ぶ微分積分学の中で扱われます。

この証明のポイント

$\dfrac{\Delta y}{\Delta x}=\dfrac{\Delta y}{\Delta u}\cdot\dfrac{\Delta u}{\Delta x}$ という、分数のかけ算では当たり前に成り立つ変形を、$x$ が微小に変化したときの $y$, $u$ の変化量の比に当てはめる、という発想が連鎖律の直感的な理解の中心です。「$y$ は $u$ につれてどれだけ変化するか」と「$u$ は $x$ につれてどれだけ変化するか」をかけ合わせれば、「$y$ は $x$ につれてどれだけ変化するか」がわかる、という考え方は、複数の量が連鎖的に関係し合う他の場面(変化率どうしの関係)を考えるときにも応用できます。